水虫
水虫とは?
白癬菌というカビの菌が皮膚に寄生して生じる感染症です。
水虫は足に感染し皮膚病変を発症したもので、その他、全身の皮膚や爪はどこでも感染することがあります。
かゆみで気が付く方もいますが、水虫自体は必ずしもかゆみを伴うわけではなく、皮がむけカサカサしているだけということも少なくありません。
足白癬の種類
趾間型
ゆびの間が白くふやけ、皮がむけたりします。
小水疱型
土踏まずや足の辺縁の方に小さな水ぶくれができます。
水ぶくれが乾燥してかさかさすることもあります。
角質増殖型
足底や踵の皮膚が硬くなり、表面がガサガサし、ヒビ割れやあかぎれが起こり痛みを生じることもあります。
足爪白癬
足白癬を長年放置したために爪にうつってしまった場合が多いです。
白や黄色に変色し、爪が脆くなります。
治療
まず、剥けている皮膚や水ぶくれ、爪を採取し顕微鏡で白癬菌を確認します。
診断後は外用薬による治療を行います。外用薬は、見た目が改善してからも2か月継続して外用することで、再燃しにくくなります。
爪白癬の場合は内服薬や爪用の外用薬で治療します。効果は内服薬の方が高いですが、体への負担を考え採血をしながら治療をすすめます。爪の場合は足白癬と比較して治るまで時間がかかります。時間はかかりますが、それ以上の悪化や他人にうつしてしまうリスクを減らすために外用の継続が推奨されています。
水虫の外用薬はかぶれやすいことが特徴です。外用薬を開始して、1~2週間で逆にひどくなったと思われたら再診をお願いいたします。違う系統の薬を処方します。
市販薬の使用について
水虫で受診される方の中に、市販薬を使用されてご来院される方が多くいらっしゃいます。
水虫治療における市販薬使用の影響は大きく2つあります。
- ➀ 確実な診断が出来ない点
- ➁ 市販薬によるかぶれを併発する点
市販薬を外用されていると、顕微鏡で菌が見つかりにくくなり、診断ができないことがあります。市販薬を使用しているから菌がいないのか、それとも、もともといないのか判断できません。もし市販薬を使用されていたら、中止にして2週間おいて受診をお願いいたします。
また、水虫薬はかぶれを起こしやすく、市販薬を使用して逆に悪化したというケースが少なくありません。かぶれを起こしている場合は先にかぶれの治療をし、顕微鏡検査で白癬菌を確認した上で水虫の治療になります。
足のかゆみや、皮がむけたりすると水虫が心配になりますが、そのような状態がすべて水虫ではありません。まず、診断を受けることが大切です。
毎日洗っていれば
水虫にはならない?
白癬菌は24時間以上皮膚に付着していなければ感染しません。
温泉やスポーツジムなど公共の場で裸足になりスリッパの共有などが行われたら、その日のうちに、足の指の間を洗い水分を拭いしっかり乾かすことが重要です。
とびひ
とびひとは?
小さな傷から黄色ブドウ球菌やレンサ球菌といった細菌が入り込むことで発症します。かゆみを伴い、次第に水ぶくれやかさぶたができ、または膿が出たりします。
これらの菌は、身の回りに常在しており、健康な状態であれば皮膚のバリア機能によって感染を防ぐことができます。しかし、皮膚に湿疹や傷、虫刺されなどがあるとそこから菌が入りやすくなり、とびひを発症することがあります。特にアトピー性皮膚炎の方は、皮膚のバリア機能が低下しているため、とびひになりやすい傾向があります。
とびひは、その名の通り、まるで火の粉が飛び火するように、体の皮膚のあちこちに広がって同じ症状を出します。また、接触により他人にもうつしてしまうことが特徴です。
とびひの種類
水疱性膿痂疹
乳幼児や小児に多く発症し、初夏から暑い時期に増えます。掻痒を伴う水疱を形成します。
掻くことで水疱内容物が体の他の部位に付着し“飛び火”していきます。
あせもや虫刺され、湿疹、アトピー性皮膚炎の掻破した部位から感染を起こすことが多いです。
主に黄色ブドウ球菌が原因で起こります。
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痂皮性膿痂疹
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水ぶくれを作らないとびひで、膿疱(内容物が膿)や厚いかさぶたを形成します。
炎症が強く、リンパ節が腫れ発熱を伴うこともあります。
季節や年齢を問わず発症しますが、アトピー性皮膚炎に合併し、成人に多く発症します。
主にレンサ球菌が原因で起こります。とびひが原因で、腎臓の病気の合併症を引き起こす可能性もあるため適切な治療を受けることが大切です。
ご自宅での注意点
病変部は流水でよく流し、できれば泡立てた石鹸でよく洗うようにしましょう。洗った後に、軟膏を塗布し、ガーゼなどでしっかり覆うようにしましょう。
とびひはうつる病気です。ご自分にも飛び火しますが、他人にもうつしてしまう病気です。直接触れることや、タオルやおもちゃなど物を介してうつってしまいます。そのため登園登校は禁止ではありませんが、ガーゼ等で覆う必要があります。また、プールは医師の許可がおりるまで控えた方が良いでしょう。
乾燥肌やアトピー性皮膚炎の方に発症しやすい傾向があります。日々の保湿ケアや、湿疹の治療を早めに対処するようにしましょう。
ウイルス性イボ(水イボ・手足のイボ)
イボにはたくさんの種類がありますが、ここではウイルスが関与するものの中で比較的身近なものをご紹介します。
ポックスウイルスの感染が原因となる伝染性軟属腫(水イボ)とヒトパピローマウイルスの感染が原因となる尋常性疣贅です。
どちらも小児に発症することが多いですが、大人にも感染します。
治療

伝染性軟属腫(水イボ)
水イボは、直接触れたり、タオルやビート版、浮き輪などの共用によってうつります。一般的には学童期にもなれば、自然治癒することが多いですが、ご兄弟間でうつし合ってしまうことで、学童期以降にみられることもあります。
当院では、初回受診の際に水イボの診断をして、ご希望により取られたい方には麻酔テープをお渡しします。当日でもそれ以降でも大丈夫ですが、次回麻酔テープをご自宅で貼ってきていただき、効果が最大にでるころ専用のピンセットで患部をつまんで除去していきます。1回で取れる分は麻酔テープで貼り切れる量とさせていただいております。たくさんある場合には、再度麻酔テープをお渡ししますので、日を分けて受診していただき除去します。麻酔テープを必要としない方は、すぐに処置ができます。
水イボは取るべきか
取らなくてもよいものか?
水イボは自然に治ることがありますが、その間に他の人へうつしてしまう可能性もあります。また、自然治癒を待っている間にひどく広がってしまうこともあります。
広がってしまってから、やはり除去希望となることもあり、その際はお子さんに大きな負担を強いることにもなりかねません。
また、1個が大きくなってしまった場合、除去後に少し陥凹した傷跡が残る場合もあります。
しかし、処置には麻酔テープを使用しても多少なりとも痛みを伴うものです。必ずしもすぐに取らなくてもよい場合もあります。ご相談しながら治療方針を決めていきたいと思います。

尋常性疣贅
尋常性疣贅は、主に人から人へ直接触れ、小さな傷からウイルスが侵入することで発生します。
足底や手指、膝など露出した部分にできやすい傾向があります。
免疫がつけば自然治癒することもまれにありますが、多くは時間をかけて増大し、うつって増えていきます。
液体窒素による凍結療法が、皮膚科学会のガイドライン上、もっとも有効で簡便であることから強く推奨されています。
液体窒素による凍結療法とは
-196℃の液体窒素を使い、イボを凍らせて細胞を壊死させていく治療法です。
しみるような痛みを伴います。
治療後は、2.3日程痛みが続くこともあります。数日後にカサブタや水疱・血疱になることがあります。1〜2週間くらいかけてカサブタや水疱・血疱が代謝とともに取れていきイボが小さくなるという治療です。目に見えたカサブタや水疱・血疱ができなくても、少しずつ剥がれて小さくなっていきます。
1回の治療では取りきれないことがほとんどで、1〜2週間毎に液体窒素を繰り返します。取りきれるまでの回数は、イボの大きさや厚さ、部位、体質により個人差があり、また液体窒素をあてる強さにもよります。
施術後は、お風呂や洗顔など普段通り可能で、自宅での処置やガーゼ保護等も不要です。
もし水疱や血疱が大きくできて生活に支障が出る場合には、ご来院いただければ処置することができます。
イボが取れた後に一時的に炎症後色素沈着を生じることがあります。時間の経過とともに薄くなり馴染んでいきます。
お子さんの場合、痛みのために治療の継続が難しくなってしまうこともあるため、当てる強さは様子を見て加減して行います。
もし運動会が予定されている等、ご都合があるときも調整して当てますので、ご相談ください。
帯状疱疹
帯状疱疹とは?
帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルスが引き起こす病気です。“水ぼうそうのやり直し”と言われていますが、子供のころにかかった水ぼうそうのウイルスが、治った後にも神経節という部分に潜伏しています。通常は免疫によって抑えられているのですが、加齢やストレス、過労などによって免疫力が低下した時に神経を通って再び活性化することで発症します。
症状
皮疹が出現する数日前から体の片側にピリピリ・ズキズキとした痛みや全身のだるさや倦怠感が現れます。その後、紅斑や水ぶくれが帯状に現れるのが特徴です。神経に沿って現れるため、体の左右どちらか一方にのみ発生します。全身症状として、微熱や頭痛などの症状が現れることもあります。
通常、2~3週間でかさぶたとなり傷は治癒していきますが、痛みは長く続く場合があります。傷が深くなってしまった部位は痕に残ることがあります。
初期症状は個人によって異なり、また、全く症状を感じずに皮膚症状が現れる場合もあります。逆にまれに皮膚症状を伴わない帯状疱疹もあります。しかし、早期に発見し治療を開始することで、症状の悪化や合併症のリスクを減らすことができます。少しでも気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。
合併症
帯状疱疹後神経痛
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皮膚病変が軽快・消失したにも関わらず痛みが増強あるいは長引く場合があります。針で刺されるような痛み、電気が走るような痛み、焼けるような痛み、軽微な刺激で増強する痛みなど、神経そのものの機能異常による痛みを感じます。また、痛みの部分の感覚が低下したり過敏になっていたりします。
眼合併症
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上顔面から前頭部にかけての帯状疱疹では角膜炎や結膜炎などの症状がでることがあります。充血や目がかすむなど症状がある場合は眼科も受診をしていただくようお願いしております。症状がなくても、周辺の帯状疱疹の場合には受診した方が安心です。
Ramsay-Hunt(ラムゼイハント)症候群
耳の帯状疱疹によって顔面神経麻痺・難聴・めまいがでることがあります。耳鼻科をご紹介し専門領域での治療をおすすめします。
中枢神経・内臓合併症
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重症化すると髄膜炎・脳炎を起こすことがあります。片側ではない頭全体の痛みや吐き気などの症状がある場合には大きな病院にご紹介します。
また、うでの帯状疱疹では運動麻痺が生じることや、お腹周りでは便秘を伴うこと、また性器周囲では、膀胱直腸障害が起こることがあり、便秘や排尿ができなくなることがあります。
治療
帯状疱疹の治療は、主に抗ウイルス薬や痛みを抑えるための鎮痛薬です。
外用薬を処方することもあります。
抗ウイルス薬はウイルスが増殖するのを抑え、皮膚症状の改善や神経痛の軽減を促します。発症から72時間以内に内服を開始し、一般的には7日間内服をします。7日間の内服が終わっても皮膚症状や痛みは残存していることがほとんどですが、飲み切り終了となります。
症状が重篤な場合、点滴での抗ウイルス薬投与が必要となることがあります。
痛みに対しては鎮痛薬を処方します。痛みの病態に合わせて、さまざまな鎮痛剤の中から選択して治療していきます。
治療期間は通常約1か月ほどですが、重症度や合併症の有無によって異なります。
痛みのコントロールが難しい場合、ペインクリニックにご紹介することもあります。
治療中に気を付けること
免疫力が低下して発症しているため、十分な休息をとるようにいたしましょう。
神経痛は冷やすと痛みが増すため、温めるようにしましょう。ご家族への感染に気を付ければ、お風呂もゆっくり入っていただけます。
帯状疱疹の水ぶくれの中には高濃度のウイルスが含まれており、かさぶたになるまでは他人に感染させてしまうリスクがあります。
帯状疱疹を“帯状疱疹”として他人にうつすことはありません。しかし、水ぼうそうのワクチンを打っていない方、水ぼうそうにかかったことのない方、免疫の低下している方には“水ぼうそう”としてうつしてしまう可能性があります。特に、重症化するリスクがあるため、ワクチン未接種である赤ちゃんや、妊娠されている方には胎児にも影響が及びますので注意が必要です。免疫のある成人と接する場合には、接触感染対策として患部を覆っていれば問題ないとされています。しかし空気感染させるリスクは0ではありません。時に全身に水ぶくれが散布され汎発性帯状疱疹といわれる病態となれば、空気感染させてしまいます。
経過中、どんな場合も空気感染させてしまう可能性があることに留意し、接触感染・飛沫感染・空気感染する病気ととらえていただき、水ぶくれがすべてかさぶたになるまでの期間は注意が必要です。
ヘルペス
ヘルペスとは?
ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)の感染によって引き起こされます。
粘膜より感染した後、体内に潜伏し発熱やストレス、日光などがきっかけとなり繰り返し症状が現れます。
初感染(初めてヘルペスに感染した場合)は重症化し、広範囲に症状が広がり、また発熱などの全身症状が出ることがあります。全く無症状で気付かないうちに感染している場合も多いです。
ヘルペスは、主にHSV-1型とHSV-2型に分けられます。
HSV-1型(1型ヘルペスウイルス)
多くは幼少期に感染し、口唇ヘルペスなど顔のヘルペスの原因となります。キスや食器の共有など、唾液を介して感染します。
最近は性器ヘルペスでも1型がみられます。
HSV-2型(2型ヘルペスウイルス):性器ヘルペス
思春期以降に性行為によって感染することが多いです。
症状
初期症状として、数日前からピリピリと感じることが多く、その後、小さな水ぶくれが複数集まるような特徴的な見た目を呈します。水ぶくれは破れてかさぶたになり、通常1週間程度で治癒します。
全身どこでも発生しますが、口唇や性器に多く発症します。
再活性化による再発は、初感染時よりも症状が軽く出ますが、見た目や痛みにより精神的苦痛が大きくなってしまうこともあります。
治療
ヘルペスの大部分は軽症で自然治癒する病気です。治療には内服薬による全身療法と外用薬による局所療法がありますが、これらの薬はPIT療法や再発抑制療法を除いては罹病期間(ヘルペスにかかっている期間)を短縮させる目的で使用します。
いったん治ってもウイルスが神経に潜伏しているため、ウイルス自体を体から排除するような治療は難しいです。
しかし、適切な治療を行うことで、症状の再発を極力抑え、発症しても日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
薬物療法
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内服薬
ウイルスが増殖するのを抑える抗ウイルス薬を内服します。発症初期に近いほど効果が期待できるため、なるべく早期に服用を開始することで、症状の悪化や治癒までの期間を短縮することができます。
外用薬
外用薬による治療は、潜伏している神経まで薬の効果が届かないため、ウイルスの増殖を抑えることは難しいとされています。そのため、効果としては自然治癒(無治療での経過)にほとんど近いとされていますが、大きな副作用もないため、ご希望される場合には処方が可能です。
PIT療法
PIT療法とは、Patient Initiated Therapyの略で、ピリピリとした自覚症状があった時点で患者様御自身の判断で内服を開始します。
目安として、年に3回以上ヘルペスを繰り返し、ピリピリとした前駆症状を正確に判断できる方が対象となります。
あらかじめ再発時の薬を1回分お渡ししておくことができる治療法です。
発症早期に開始するほど効果が高い薬ですので、症状が出たときにすぐ来院することができない方にはとても向いている治療法です。
PIT療法により、発症を抑え、発症したとしても症状を軽減することができます。
手元にお薬があることでとても安心です。
性器ヘルペスの再発抑制療法
高頻度に再発を繰り返す性器ヘルペスの再発をおさえていくための治療です。
発症してから病院を受診するのではなく、継続的にお薬を内服して発症を抑える治療方法です。
目安として、年に6回以上再発する方が適応となります。
1日1回抗ウイルス薬を継続的に内服します。1年間内服したのち中止し、再発が起こらないか慎重に経過を見ます。再発時は再度、再発抑制療法を検討します。内服中止後は再発する場合が多いですが、ヘルペスウイルスを排除する治療ではないことをご理解ください。
治療中に気を付けること
疲労やストレスを避けることは難しく、再発する可能性が高いです。再発時は早期の治療とともに他者への感染防止のために、タオルや食器などの共有は避けましょう。
また、患部には触れないようにし、触れた場合はすぐに手を洗いましょう。
ヘルペスと自己診断し、市販薬を使っているけれど治らないということがよくあります。適切な診断と治療が大切です。気になる症状があればお気軽にご相談ください。