やけど
やけどは、熱によって皮膚や組織が損傷をうけることです。日常生活で身近に発生しやすい病気です。症状は、水ぶくれ、ただれ、痛み等程度により様々です。軽度であれば放置しても治っていくことはありますが、程度によっては跡が残ったり、ケロイドになったり、感染症を引き起こすことがあるため注意が必要です。やけどは、その温度と接触時間により程度が変わります。また、経過とともに重症化していく場合もあります。
最近は、夏場に紫外線による日焼けや、冬場に“あんか”や“湯たんぽ”の使用などの長時間接触による低温熱傷も増加しています。また、女性ではヘアアイロンによる顔回りのやけども頻度が高いです。ちょっとした不注意で起こってしまうことが多いですが、日ごろから予防を心がけることでリスクを減らすことができます。
治療は、状態により、皮膚の炎症を和らげ痛みを軽減する軟膏や感染を予防する軟膏、傷の治癒を促進する軟膏などを専門的に使い分けます。状態によりこまめに外用薬の選択が変わることもあるため、落ち着くまでは何度か受診が必要になることがあります。また、鎮痛薬や抗生剤の内服も検討します。傷を保護する目的で状態に合わせて創傷被覆材を選択します。やけどの範囲が広範囲で全身状態が危ない場合や、傷が深く外科的処置が必要な場合などは大きな病院へ紹介します。やけど跡を最小限に抑えるためのアドバイスや治療についてもご相談をお受けしております。
やけどが起こった場合、自宅ではすぐに流水で冷やし、清潔に保つことが重要です。適切な初期評価と治療が必要なため、早期に医療機関を受診することが大切です。
傷・ケロイド
傷には、切り傷、擦り傷、咬み傷、刺創(とげが刺さった)など様々な種類があります。外的要因により皮膚が損傷を受けたものですが、傷口から感染症を引き起こしたり、出血が止まらない場合や深い傷の場合は縫合が必要になることもあります。感染症を抑える内服薬や、状態に応じた外用薬を使用します。当院ではご自宅での処置の方法についても、不安なくできるようご案内しております。
体質や物理的刺激によって、傷が肥厚性瘢痕やケロイドを残して治癒することもあります。肥厚性瘢痕は、傷痕の範囲を超えることなく、その部分で赤く硬く隆起します。ケロイドは、傷痕の範囲を超えて赤く硬く盛り上がり、痛みやかゆみを出す状態のことをいいます。肥厚性瘢痕は、長い時間経過で自然軽快することがありますが、ケロイドは自然軽快することはほとんどありません。肥厚性瘢痕やケロイドが発生した場合は外用薬や貼付剤、内服薬や注射による治療を検討します。
傷は乾かす?
消毒はするべき?
昔、傷は『消毒して乾かす』が一般的だったようですが、医学の進歩により今は湿潤療法という考え方をもとに、消毒せず『湿った状態で治す』が正解となっています。かさぶたができなくて心配される方もいらっしゃいますが、かさぶたは必要ありません。
湿潤療法によって、痛みが少なく早くきれいに治るといわれています。
消毒は痛いだけでなく、傷の治りを遅延させることが分かっています。さらには、消毒薬の成分が原因で接触皮膚炎(かぶれ)を起こすこともあります。
消毒はせず、傷口に異物がある場合は取り除き、流水でよく洗うことが大切です。
キズパワーパッドを
貼っていますが治りません…
キズパワーパッドやケアリーブなどいわゆる「ハイドロコロイド」といわれる創傷被覆材は、水を通さず傷を保護し痛みを軽減しながら傷を早くきれいに治してくれるため、とても便利です。外来でも、貼っていらっしゃる方をよく診察します。特に、お子さんの傷に貼ると、防水のため水にぬれず痛がらないこともあり貼っているケースが多いように感じます。しかし、ハイドロコロイドが適している傷と適していない傷があるのはご存じでしょうか?
ハイドロコロイドは密閉させることで傷から出てくる浸出液を閉じ込め傷の自己治癒を促す目的で使われます。しかし、貼りっぱなしの密閉環境では菌が繁殖するリスクが高くなります。例えば、外で転んだ傷や動物に咬まれた傷や膿が付着し赤く腫れているような傷には適していません。そのような傷に貼り付けたままで重度の感染を起こしてしまうこともあります。そうなると傷もきれいには治りません。
また、やけどの水ぶくれに貼り付けてしまい、貼り替え時に水ぶくれと一緒に剥がれてしまったという方も多く受診されます。やけどは、時間とともに症状が進行する場合もあるため、最初は水ぶくれがなくても後から発生してくることがあり、ハイドロコロイド製剤は向いていないといえます。
ハイドロコロイド製剤は、感染を起こす可能性の少ないきれいな傷にのみ適応になります。そして、貼り替えのタイミングでは流水できれいに傷を洗浄してから新しいものに貼り替える必要があります。
蜂窩織炎
小さな傷から細菌に感染することで発症する細菌感染症です。足やすねに多く、左右どちらか片方に発症します。皮膚の広い範囲が赤くなって腫れ、熱感と痛みを伴います。えぐれた傷(潰瘍)ができることもあります。重症化すると発熱や関節痛が生じることもあります。
採血で診断と重症度の確認を行い、治療は抗菌薬の内服をします。重症の場合は点滴が必要なこともあります。点滴は当院外来でもご案内出来ます。治療中は、できるだけ患部への負荷を避け、足やすねの場合は、立っている時間がなるべくないようにします。可能な限り安静の上、患肢の挙上と冷却が必要です。弾性包帯を巻き上げることで、治療効果が高まります。
足の水虫がある場合は、その皮むけなどの部位から細菌が侵入することがあるため、水虫の治療も併行します。糖尿病などの基礎疾患がある方は重症化しやすいため注意が必要です。
巻き爪・陥入爪
巻き爪は主に足の親指に多く見られる爪の変形のことをさします。爪の左右が丸まり、彎曲した形をします。軽度の場合には、症状もなく治療しなくても良いのですが、巻きが強くなると皮膚に食い込み挟まれることで痛みを感じるようになります。痛みがなければ治療の必要はありません。爪がうまく切れない方はご相談ください。
陥入爪は刺爪(さしづめ)とも言い、巻き爪と同じく主に足の親指に多くみられます。爪の左右や角に刺爪ができ、周囲の皮膚に刺さり食い込んでしまって痛みや炎症を起こす病気です。障害を受けた皮膚に肉芽と呼ばれる赤く隆起した肉(赤色肉芽)ができてしまうこともあります。爪を短く切ってしまうことで周囲の皮膚に食い込みやすくなることが原因です。爪が周囲皮膚に当たらないようテーピングなどで保護し、肉芽に対しての処置と、内服薬と外用薬で治療します。
虫刺され
蚊、ブユ、アブ、ハチなどの昆虫に咬まれ、吸血の際に注入される唾液や毒液によるアレルギー反応でかゆみや腫れ、水ぶくれができることもあります。反応は個人差が大きく、また同一個人であっても反応の出方は変わります。年齢によっても変化し、新生児期には無反応ですが、乳児期には刺された1-2日後など遅延して症状が出ます。老年期になると刺されても無反応になります。
治療はステロイド外用やかゆみが強い場合は抗アレルギー薬の内服を検討します。
乾燥
医学的には乾皮症・皮脂欠乏症といいます。ご年齢とともに皮膚の保水機能は衰えていきますが、季節や空調が原因で低湿度環境になることでも発症します。乾燥が進むとかゆみを伴い、掻いてしまうことで皮脂欠乏性湿疹になることもあります。
治療は保湿剤の外用になりますが、湿疹ができている場合には保湿だけでは治らないこともあります。その場合、ステロイド外用薬を用いて治療します。保湿剤には、水剤性・乳剤性・クリーム・軟膏など基材に種類がありますので、ご相談で決めていきます。
また、日常生活で気を付けたいこととして、入浴時の石鹸や洗浄剤の使用は極力避け、汚れが気になる部位(脇や陰部など)のみの使用にとどめます。そして、ナイロンタオルではなく、よく泡立てて手で洗うようにします。入浴後には、早めに保湿剤を外用するようにしましょう。